先日、北海道・札幌に行っていたのですが、北海道のTVニュースでヒグマの出没・被害情報がけっこう流れていました。
その一方で、世界自然遺産に認定された知床では、マナーの悪い観光客が増えて、野生のエゾヒグマ見物のために自動車の列ができて渋滞になったり、車から無防備に降りて写メを撮りに行ったりする人が大勢いるようです。
ひどいのになると、ヒグマにエサをあげる人までいるようで、知床を管理されておられる方を悩ませているようです。
ヒグマがうろついてるということは、ライオンやトラ、ワニがうろついてるのと何ら変わりません。
下の動画をご覧ください。
「こんなのとケンカして勝てると思いますか?」
なぜ、こうした問題が起こるかというと、やはり正しい知識がないということが1つ。
それに自然に対する危機感が欠如しているというのが、もう1つではないかと思えてなりません。
この2つを人間が持たない以上、そのうち大きな獣害事件となり、襲ったクマは殺処分となることは目に見えています。
エゾヒグマ・ツキノワグマの習性などの知識をしっかり付けて、悲惨な事故を起こさないようにしていきたいと思います。
今回はエゾヒグマを中心に、お話しさせていただきます。
目次
エゾヒグマとは
エゾヒグマは北海道に生息する熊の一種。ヒグマの亜種で、日本に生息する陸上生物の中で最大です。
北海道の森林および原野に分布しています。
大きさは、オスの体長が約2m~2.3mで、体重は250kg。メスの体長が約1.6m~1.8mで、体重は150kg。
過去には体長2.7m、立ち上がると3m50cm、体重480kgという超大型の個体の記録が残っています。
かつて元アメフトの選手でK―1で大活躍していたボブサップが、身長2mで体重140kgで暴れ回っていましたが、それ以上に大きく筋肉質の体をしているわけです。
エゾヒグマの習性
発情期と子育て期以外は単独行動で、活動時間は昼夜を問わず、行動します。
クマの習性・特徴をチェックしておきましょう。
北海道では、エゾヒグマがエゾシカを襲って食べているので、スピード・パワーともに、ハンターとしても非常に優秀な生き物といえるでしょう。
エゾヒグマの特徴
・鼻(嗅覚)は犬の5倍~10倍
・耳(聴覚)も人間よりずっといい
・犬かきによる泳ぎが得意
・木登りも得意
・火を恐れない
・大きな音も恐れない
・一度獲得した獲物に執着し、何度も追いかける
・逃げる獲物を執拗に追いかける
・牙と爪が鋭い
・人間の肉の味を覚えた個体は大変危険
遭遇してしまったら、ほぼ逃げ場はないということです。遠くにいるから大丈夫だと思っても、走ってきたら、あっという間に追いつかれてしまいます。
日本人にとっては、ライオンより身近で危険な生物だと思って、ちょうどいいのではないでしょうか。
エゾヒグマの食性
食性は雑食性で、草、木の実、果物、魚、ザリガニ、アリ・ハチなどの昆虫、哺乳類も襲って食べます。
海岸に打ち上げられたクジラなど海獣の死骸も食べますし、まれに人間を襲って食べます。
要はクマにとって目に見えるものは全て食べ物。人間のように何でも食べる、何でも襲うということです。
【閲覧・音声注意】クマがシカを襲っている動画がありました。かなりエグいので、苦手な方は見ないようにしてください。
自分がこのシカの様になりたくなければ、しっかり勉強しましょう。
まっぷる 札幌 富良野・小樽・旭山動物園'21 (マップルマガジン 北海道 2)
エゾヒグマによる獣害事件
北海道にお住まいの方々が、ヒグマについて危機感を持っているのは、小さい頃からヒグマの事件や危険性について聞かされているからです。
北海道で起きたエゾヒグマによる3大獣害事件をおさらいしておきましょう。人間が食い殺されたり、大怪我を負わされるという悲惨な事故です。
三毛別羆事件
1915年(大正4年)12月に、北海道苫前郡苫前村三毛別(現:苫前町三渓)六線沢で起きた日本史上最悪の獣害事件です。
エゾヒグマが数度にわたり民家を襲い、開拓民7名が死亡、3名が重傷を負いました。
食い殺された人のお通夜の最中に、家の壁をぶち破ってエゾヒグマが乱入してきたり、妊婦がお腹から生きたまま赤ちゃんを引きずり出され、頭から食い殺されるなど、ショッキングな事件でした。
詳しくは、wikipediaで確認してください。
一番エグい場面はボカされていますが、事の重大さがわかるドキュメント映像です。
石狩沼田幌新事件
石川沼田幌新事件は、1923年(大正12年)8月に、北海道雨竜郡沼田町・幌新地区で起きた日本史上2番目の大きな被害を出した獣害事件です。
エゾヒグマが開拓民の一家や駆除に出向いた猟師を襲い、5名が死亡、3名の重傷者を出しました。討伐隊にまで被害者を出した事件です。
エゾヒグマが夏祭り終わりの集団を襲い、人間を生きたまま土に埋めようとしたり、女性を襲って生きたまま咥えて、山に引きずっていったりと、当時の開拓民を恐怖のどん底に陥れた事件です。
詳しくは、wikipediaで確認してください。
くわしく状況を解説してくれている動画がありましたが、エグいので覚悟してご覧ください。
福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件
福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件は、1970年(昭和45年)7月に、北海道日高郡新ひだか町静内高見の日高山脈カムイエクウチカウシ山で発生した獣害事件です。
若いメスのエゾヒグマが登山中の福岡大学ワンダーフォーゲル同好会の部員5名を襲撃し、うち3名の死者を出した事件。
クマの知識がなかったため、エゾヒグマにあさられた荷物を取り戻してしまったことと、頂上まであとわずかであったため、登頂に執着してしまったことが悲劇につながりました。
怖くて、散り散りになって逃げたことで、余計に襲われやすくなってしまった事件でもあります。
若くて体力がある複数名の男性であっても、クマに襲われたら、ひとたまりもないことを教えてくれます。
詳しくは、wikipediaで確認してください。
ツキノワグマによる獣害事件
ツキノワグマは日本では本州の森林に生息し、体長120~180cm。体重オス100~120kg、メス50~70kg。
食性はエゾヒグマと同じく雑食で、哺乳類を襲って食べることもあります。
ツキノワグマは小さいから大丈夫などと、侮ってはいけません。体は小さくても、すごいパワーで襲ってきます。
本州でツキノワグマに襲われた2つの事件も、知っておきましょう。つい最近のことですよ。
十和利山熊襲撃事件
十和利山熊襲撃事件は、2016年(平成28年)5月に、秋田県鹿角市十和田大湯の十和利山山麓で起きた、日本の戦後最悪の被害を出した獣害事件です。
ツキノワグマがタケノコ採りや山菜採りに来ていた人を襲撃し4人が死亡、3人が重傷を負った事件です。
複数頭のツキノワグマが人間を次々に襲ったことが珍しいケースです。
詳しくは、wikipediaで確認してください。
乗鞍岳クマ襲撃事故
乗鞍岳クマ襲撃事故は、2009年(平成21年)9月に、岐阜県・長野県の乗鞍岳で発生したツキノワグマによる襲撃事件。
観光客として乗鞍岳を訪れていた人々9人がクマに襲われ、重軽傷を負う惨事です。
騒ぎに驚いて避難していた観光客100人がごった返すバスターミナル館内に、熊が侵入して暴れ回り、観光客がパニックに陥ったという衝撃的な事件です。
詳しくは、wikipediaで確認してください。
2019年のヒグマの出没・被害状況
2019年にも、森林が近い札幌市南区の住宅街に、エゾヒグマが多数目撃されています。また、北海道川上郡標茶町では、牧場の牛が30頭も殺されるという事故が起きています。
クマによる獣害事故は、決して過去のことではないのです。
くわえて日本全体の熊による死傷者は、平成27年に56人。平成28・29年には、それぞれ100人を超えています。
自然や動物を甘く見ることは、とても危険なことです。
エゾヒグマに出会わないために
クマによる事故を防ぐには、なんと言っても『熊に出会わない』ことです。具体的にどうすればいいのでしょうか?
ヒグマの出没情報を知ろう
山に入る前には、新聞やテレビ、自治体HPなどをチェックしましょう。また、地元の人に聞くなど、熊の出没情報に気をつけてください。
クマに遭遇しやすい条件を避けよう
以下の条件下だと、クマに遭遇しやすくなります。森林や山はクマの生息する領域です。
クマの領域に安易に侵入することは避けましょう。
・霧が掛かって見通しが悪く、音も聞こえないとき
・風が強く、音がかき消されてしまうとき
・近場に水が流れていて、音がかき消されてしまうとき
・ヒグマの好物(シカの死体なども)がある場所
1人で山に入らない
山には単独で入らないようにしましょう。
集団でいることで、クマにこちらの存在を示しやすくなります。
また、クマに出会ってしまったときも、散り散りに逃げるのではなく、集団でゆっくりと立ち去っていくことが大事です。
集団でいることが、クマにとって一定の威嚇になります。
音を出しながら歩こう
しゃべりながら歩く、熊よけの鈴をつける、手をたたく。ある程度、大きな声を出して『人間が来ている』ことを示しましょう。
山には熊がいることを常に想定して、クマが人を避けるように手助けをしてやらなければなりません。
薄暗くなってから山に入るのはやめよう
人間にとって視界が遮られる状況でも、クマにとってはニオイや音をたよりに移動できるため、クマに遭遇する危険度が上がってしまいます。
真っ暗な状況では、クマから逃げられないことは、福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件でも証明されています。
クマの糞や足跡、食べた跡を見つけたら、すぐ引き返そう
クマの行動範囲はオスで平均100k㎡、メスで平均40k㎡といわれています。東京の山手線の内側の面積が約60k㎡です。
糞があるということは、近くにクマがいる可能性が高いということです。身の危険を少しでも感じたら、勇気をもって引き返しましょう。
また、シカの死体など、クマの食べかけと思われるものがあった場合、すぐに離れてください。
クマが保存しているエサを奪われたと感じたら、執拗に追いかけ回されることになりますので、大変危険です。
ゴミはすべて持ち帰りましょう
人間の残飯、生ゴミなどは、クマにとってはご馳走です。
たとえ土に埋めても鋭い鼻ですぐにかぎつけ、一度でも美味しいことを知ってしまうと、もっとエサが欲しくて、人間の元に何度でもやってきてしまいます。
釣った魚をそのまま放置しておくのも、大変危険です。
もしエゾヒグマに出会ってしまったら
本当のことをいえば、出会ってしまった時点で、あなたの負けです。
しかし、まずは落ち着いて行動することが大事です。以下のことに気をつけてください。
遠くにクマを見つけたら…
落ち着いて、今の状況を判断しましょう。
クマがこちらに気づいてなければ、静かにその場を立ち去りましょう。
クマがこちらに気づいていたら…
クマの移動する方向を見定めながら、静かに立ち去りましょう。
慌てることは事故につながります。背中を見せて、逃げてはいけません。
普通にしていれば、ほとんどのクマは立ち去ります。
それでもクマが近づいてきたら…
クマから視線を離さず、クマの目を睨み続けてください。
ナメられたら終わりです。そしてクマの動きを見ながら、ゆっくりと後退して下さい。
子グマの近くには必ず母グマがいる
子グマは生後2歳前後まで、大きさにして大型犬以上になるまでは、必ず母グマと一緒に行動します。
小熊を見つけて可愛いからといって、絶対に近寄ってはいけません。
子グマを見つけたら、速やかに立ち去りましょう。
あなたは可愛がっているつもりでも、母グマにとっては危害を加えられていると判断され、攻撃されてしまいます。
追いかけられたら、持ち物を投げ与えながら逃げる
追いかけられたときは、リュックや服などの持ち物をそっと置いて、その場を離れると、クマの気を引いて時間をかせげます。
ただし、これらの持ち物を取り返すことは自殺行為になります。
たとえクマが一時的に立ち去ったとしても、これらの持ち物は諦めて捨てましょう。
命の方が大事です。
大声を出す、走って逃げる、石を投げることは自殺行為
まずは落ち着いて、クマを刺激しないことが大事です。驚かせると襲ってくる可能性があります。
また石を投げてぶつけても、クマには効かないことが多く、あくまで最終手段です。
木に登ってやり過ごせた例もあります。焦って逃げても、逃げ切れるものではありません。
それでもクマに襲いかかられたら…
残念ながら、これをやれば大丈夫という方法はありません。
相手は猛獣です。必死に抵抗して逃げ延びた例もありますが、食い殺された例もたくさんあります。
・北米では、首の後ろを手で覆い、地面に伏して、頭部、後頭部への致命傷を防ぐ方法を勧めています。
・クマ撃退スプレーが、ある程度有効であることも知られています。山に入る際には、必ず持って行きましょう。
・鉈(なた)などで応戦して助かった事例もあります。
こうしたことからわかるように、クマに出会えば、即、命の危険にさらされるということです。
クマ撃退スプレーもある程度の効果があるとはいえ、ものすごい勢いで突進してこられたときに、うまく噴射できるとは限りません。
死んだフリは意味がない
クマは獲物を地面に押さえつけてひきずる傾向があるので、うつ伏せても意味がありません。
また、ものすごいパワーで引きずられるので、やり過ごせるものではありません。
簡単ですが、動画がありましたので、よければ見ておいてください。
エゾヒグマの駆除について
エゾヒグマによる農業被害、家畜被害、人的被害が起きた場合、そのエゾヒグマは駆除するしか方法がありません。
だからこそ、人とエゾヒグマは出会わないことが一番良いのです。
知床は豊かな自然が残っていることで、世界自然遺産となりました。そこに実際に行ってみたいという思いは自然なものではあると思います。
しかし、エサをあげるなどというのは、もっとも愚かな行為です。
『人間はおいしいものを持っている。奪い取ろう!』となって、人間が襲われるケースが多くなっています。
ですから、人間が正しい知識をつけて、マナーを守って行動するしかないのです。
また、クマを駆除したり、応援要請を受けて助けに来てくれる『猟友会』も高齢化が進み、後継者不足に陥っています。
近い将来、マナーの悪い観光客が増えて、クマの事故が増えるのに、駆除できる人が減っていくという悪循環になれば、知床に人が立ち入ることは禁止ということになりかねません。
素晴らしい環境だからこそ、みんなで大切にしていきたいですね。
まっぷる 知床・阿寒 網走・釧路湿原'21 (まっぷるマガジン)
新世代クマの出現
最近は、①エゾヒグマの保護が進んでいること、②宅地造成等でかつての里山がなくなり、クマと人間の接点が増えたこと、③観光客が安易にエゾヒグマに関わったりすることなどから、人に対する恐怖経験が全くない世代の『新世代クマ』と呼ばれるクマが増えています。
そうした『新世代クマ』は人間の持っている食べ物が美味しいことを知っていて、クマ除け鈴の音を聞くと、かえって人間に近づいてしまったり、住宅地に降りてきてしまう個体も出てきていると言われています。
どれだけ人間に慣れようと、人間にとって猛獣のクマが接触してきたら駆除するしかありません。
やはり平和的に棲み分けをしていきたいですね。
安全にエゾヒグマが見たいなら
『それでも、やっぱりヒグマをこの目で見たいよ!』というのは人情だと思います。
その場合は、やはりクマ牧場や動物園など、安全に管理されているところで見るのが一番です。
その方が安全でじっくり見られますし、動物園経営の助けにもなります。
お近くの動物園等でも見られると思いますが、やはり本場・北海道の札幌近辺で行ってみたいのは、『円山動物園』『旭山動物園』、『のぼりべつクマ牧場』ではないでしょうか。
『のぼりべつクマ牧場』に行ってみたいと思っていたので、行ってきました。
行き方などは上記の記事をご覧ください!
のぼりべつクマ牧場 | |
所在地 | 〒059-0551 北海道登別市登別温泉町224 |
電話番号 | 0143-84-2225 |
営業時間 | 4月~6月 8:30~16:30 7月~9月 8:00~17:00 10月~1月 8:30~16:30 2月~3月 8:30~16:00 |
定休日 | 年中無休(毎年4月にロープウェイ点検のため20日間の休園あり) |
URL | https://bearpark.jp/ |
北海道で車中泊やキャンプする場合
エゾヒグマは市街地に出ることはあまりありませんが、森林や原野にはたくさん生息していますので、車中泊やキャンプをする際は、特に気をつけてください。
最悪の被害を防止する策として、炊事場とテントをできるだけ離れたところに設営することです。
仮に食事する場所を荒らされても、離れた場所のテントや貴重品を守れれば、素早くその場を離れやすいのではないでしょうか。
もちろん残飯や生ゴミを出さない、放置しておかないことは最低限のマナーです。
そして、エゾヒグマに遭遇してしまったら、慌てずに、しかし迅速に、その場から離れることが大切です。
もし、荷物を奪われてしまったら、その荷物を絶対に取り返してはいけません。
しつこく追いかけ回され、襲われ続けることになります。
最後に
エゾヒグマ、ツキノワグマの恐ろしさと対処法、いかがだったでしょうか?
野生のエゾヒグマはぬいぐるみではありません。人間がケンカを売っても、とても勝てるものではありません。
でも、クマに落ち度はなく、人間が気をつけて行動するしかありません。野生動物は同じ地球に住む仲間として、仲良く共存共栄していきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。