【第98回箱根駅伝2022】青山学院大学の勝因と他大学の敗因分析
スポンサーリンク

 

 

2022年1月2日・3日に行われた第98回箱根駅伝2022は、青山学院大学が盤石のレース運びで往路優勝・袋優勝、もちろん総合優勝の完全勝利を収めました。

 

戦国駅伝といわれながら、2位の順天堂大学とのタイム差はなんと10分51秒。

圧倒的な強さをみせた青山学院大学の勝因と、他大学の敗因を分析し、今後の展望について意見を述べてみたいと思いますので、少しお付き合いいただけますと幸いです。

 

 

第98回箱根駅伝2022の結果と予想の答え合わせ↓

 

第98回箱根駅伝2022の滝山の予想↓

 

 

第98回箱根駅伝2022のレース展開

まず最初に、第98回箱根駅伝2022のレース展開を、青山学院大学と駒澤大学の選手を中心に振り返っておきましょう。

 

1区

昨年同様に、1区は様子見になって牽制し合うと思われましたが、中央大学の吉居大和選手が1人、早々に飛び出し、その他の選手が第二集団を形成していきます。

吉居選手は10kmの通過タイムが27分58秒となり、相当早いペースですが、第二集団も約28分20秒ということで、こちらもかなりのハイペースで進みます。

吉居選手をあまり逃がしすぎるのも良くないと思ったのか、早稲田大学の井川選手や創価大学の葛西選手、明治大学の手嶋杏丞選手などが第二集団を引っ張っていきます。

 

優勝候補の青山学院大学の志貴選手、駒澤大学の唐澤選手、東京国際大学の山谷選手は動じず、第二集団の中段で様子を伺っています。

吉居選手は第二集団が見えなくなるほど独走してしまいますが、第二集団も16km辺りで仕掛け合いが始まり、集団がばらけ始めます。

そして、18km地点の六郷橋の上では駒澤大学の唐澤選手が抜け出そうとしますが、青山学院大学の志貴選手も食らいついていきます。

結局、吉居大和選手は1時間00分40秒の区間新記録で、トップでタスキを渡します。

第二集団は選手がバラけながらも次々に鶴見中継所に飛び込んできて、トップから39秒差の2位に駒澤大学。

青山学院大学は5位でトップからは45秒差、駒澤大学とは6秒差となりました。

この時点では、駒澤大学も青山学院大学も思惑通りのレース展開だったと思います。

 

2区

花の2区は、まず駒澤大学のエース田澤廉選手が好調で、7km付近で中央大学を抜いてトップに立ち、そのまま差を広げていきます。

田澤選手は1時間6分13秒という、2区歴代4位の好タイムを叩きだし区間賞を獲得。

注目されていた東京国際大学のイェゴン・ヴィンセント選手は5km付近で足を痛めてしまい失速。

それでも1時間7分2秒はすごいですが、彼としては初めて駅伝で敗北するという不本意な結果だったことでしょう。

さて、青山学院大学のエース近藤幸太郎選手も前を追い、12km地点で中央大学をかわして2位に浮上するも、駒澤大学との差は開いてしまい、戸塚中継所では1分2秒差がついてしまいます。

この時点では、やはり駒澤大学は強いな、さすがに田澤選手は良い流れを作るなと思いました。

 

3区

トップを走る駒澤大学の3区は、駅伝で結果を残してきた安原太陽選手。積極的な走りが持ち味ですが、今日はペースが上がりません。

それに対して、出遅れていた東京国際大学の日本人エース丹所健選手が猛然と追いかけてきました。

2位を走っていた太田蒼生選手を一気に呑み込み、差を広げるかと思いましたが、太田選手は丹所選手に食らいついていきます。

そして、ついにトップを走っていた駒澤大学の安原選手に追いつき、先頭集団が3人になりました。

この時点では、まだどうなるかわかりませんでしたが、3人の中で駒澤大学の安原選手が遅れてしまいます。

これで青山学院大学が優勝する可能性が高くなるなと、多くの人が思ったのではないでしょうか?

 

さらに、18km地点で太田選手が丹所選手をかわして、そのままトップに立ってしまいました。

この時点で、完全に勝負あったと確信しました。

 

4区&5区

4区以降は、青山学院大学の選手はブレーキは誰一人としてなく、先頭効果とでもいうか、良い流れにも乗って、後続との差をどんどん開いていきました。

それに対して、ライバルと目されていた駒澤大学の各選手は特別悪くはないものの、前を追う気迫があまり感じられませんでした。

懸念していた5区の若林選手も、出雲駅伝や全日本大学駅伝のだらしない走りは一体何だったのかと思うほど、躍動的な走りで、後続を寄せ付けませんでした。

そして、往路が終わった時点で3分28秒差。

 

昨年は、格下の創価大学相手に2分14秒差でしたから、まだやれるという雰囲気もありましたが、復路も有力選手を残している青学相手ではどうにもなりません。

他大学には早くも諦めムードが漂い始めます。

 

復路

そして、復路はもっともっと勢いの差が顕在化していきました。

6区は高橋勇輝選手があまりエンジンがかかりませんでしたが、氷点下の気温の中で地面が濡れていて、凍結しているかもしれないわけですから、安全運転となるのは仕方のないこと。

7区以降はピクニックランでもよかったのですが、各選手はそれぞれが攻めた走りで、どんどん差が開いていきます。

 

巻き返しを図りたい駒澤大学ですが、元々調子がよくない選手を走らせたのか、差が縮まらないどころか、8区の鈴木芽吹選手は大ブレーキとなるなど、まったく良いところナシでした。

さらに9区と10区では、中村唯翔選手と中倉啓敦選手がそれぞれ区間新の走りで、青山学院大学は復路新記録をたたき出します。

2位の順天堂大学と10分51秒差、3位の駒澤大学とは11分15秒差ということで、各区間平均で1分以上の差がついてしまい、終わってみれば青山学院大学の圧勝に終わりました。

 

 

2022箱根駅伝速報号(陸上競技マガジン増刊 2022年 02 月号)[雑誌]

 

 

陸上競技マガジン 2022年 02 月号[別冊付録:箱根駅伝2022スペシャル両面ポスター] [雑誌]

 

 

月刊陸上競技 2022年 02 月号 [雑誌]

 

 

青山学院大学の勝因

大混戦が予想された第98回箱根駅伝2022でしたが、青山学院大学が圧勝しました。

 

彼らが勝った勝因は何だったのでしょうか?僕は以下の3つじゃないかなと思っています。

青山学院大学の勝因
①圧倒的な選手層
②各選手に考える力がある
③チャンスの平等と成果の不平等

 

この3つの要素がある限り、今後も青山学院大学は大学駅伝のトップに君臨していくことでしょう。

 

①圧倒的な選手層

どう考えても、一番にあげないといけないのは、圧倒的に選手層が厚いということです。

チームエントリー16名全員が、10000m・28分台ということが有名です。

しかし、エントリーに入っていない選手も、あと10人ほどが28分台ランナーということで、選手層がとんでもなく厚いのです。

箱根駅伝に出られなかった選手が、1月9日に行われたハイテクハーフマラソンに出場。多くの選手が62分台の好タイムをたたき出して、上位を独占しました。

他大学ならエース級の選手が、エントリー漏れしてしまう青山学院大学のすごさを見せつけられた思いです。

他大学なら楽々と箱根駅伝を走れるはずなのに、残酷といえばこれほど残酷なこともないのでしょうが…。

 

対する駒澤大学も選手層は十分に厚いのですが、青山学院大学ほどの選手層の厚みはありません。

それが今回の箱根駅伝では、如実に出てしまったと思います。

青山学院大学は調子の悪い選手は1人もいませんでしたが、駒澤大学は明らかに調子の悪い選手が複数人いました。

ギリギリの戦いをしていく中で、持てる力をすべて出せなければ、いかに実力者であってもブレーキになってしまいます。

駒澤大学の場合、3区4区7区8区は明らかに調子が悪く、持っている実力の半分も出せたかどうかわかりません。

特に、8区の鈴木芽吹選手はまぎれもないエースではありますが、まったく力を発揮できませんでした。

 

それに対して青山学院大学は、区間順位10位以下は1人もいませんでした。

仮に、今回補員に終わった選手が代わりに走っていたとしても、ほぼ変わらない順位で走ったことでしょう。

10000mもハーフマラソンの持ちタイムも、今回走った選手と全く変わらない選手ばかりだからです。

もっと言えば、チームエントリー16名に入っていない選手であっても、遜色ない選手が複数人います。

 

なぜ原監督がこれだけの選手層を作り上げたかというと、前回の箱根駅伝が原因でしょう。

前回3区に配置しようとしていた前主将の神林勇太選手が、直前に疲労骨折で出走することができませんでした。

それによって替えのきかない主将の代わりを務められる選手がいなかったため、レースはガタガタになってしまい、4位に沈んでしまいました。

エースが流れを変えることはもちろん大事だとは思いますが、誰か特定の選手に頼るチームだと、その選手が故障してしまったら、どうしようもなくなってしまいます。

各大学のエースやケニア人留学生が故障して出られなくなり、シード権を失ったというケースも過去にいくらでもあります。

まさに前回の青山学院大学がそのパターンでした。

 

しかし、その苦い経験によって原監督は、1人に頼らないチーム作り、代わりがいくらでもいるチーム作りをしていきました。

その結果、誰もかなわない史上最強のチームが出来上がったのです。

また、これまでチーム内の競走が激しいため、12月初旬にピークが来てしまい、箱根駅伝の当日にピークが合わない選手がいました。

そのため、ピークを1月2日・3日に合わせられそうな選手を選ぶと宣言して、本末転倒にならないように配慮もしていました。

トークはおちゃらけて見えるかもしれませんが、原監督は勝負に対して本当に隙がないと思います。

 

②各選手に考える力がある

4区以降はずっと一人旅になってしまったので、具体的にどうだったということは言えないのですが、青山学院大学の選手はみんな陸上脳があるというか、賢いと思います。

特に、1区の志貴勇斗選手と3区の大田蒼生選手がとてもクレバーなレース運びだったと思います。

1区の志貴選手は、中央大学の吉居選手が飛び出し、他の選手が少なからず動揺する中でも、冷静に第二集団の中で走っていました。

 

青山学院大学にとってライバルは駒澤大学や東京国際大学だったので、その2選手が飛び出さなかったので、自分も焦らずジッと我慢していました。

そして、18km地点の六郷橋で、駒澤大学の唐澤選手が抜け出しそうになったところで、はじめてペースをあげて付いていきました。

余計な体力を使わずに、最後まで力を発揮するためにクレバーな走りだったと思います。

1区の志貴選手にとって最も大切なことは『ライバル駒澤大学に勝つor離されすぎないこと』ですから、その通りの走りがしっかり出来ていたと思います。

 

そして、往路のMVPといってもいい3区の太田蒼生選手。

 

3区の序盤、後ろから東京国際大学の丹所選手がガンガン追いかけてくるという、選手にとって嫌な展開でした。

大学長距離界屈指の実力者が、後ろから自分を標的にしてガンガン迫ってくるというのは、決して気持ちのいいものではありません。

しかし、力の差があるのは仕方のないことですから、そこで冷静になって、どんな走りをすることがチームにとってベストなのか?

自分はどんな走りができれば、チームの勝利に貢献できるのか?を考えて、走らなければなりません。

あの時点で、太田選手がやるべきことは何だったのか?答えはトップを走る『ライバル駒澤大学との差を詰めておくこと』です。

そのためには、丹所選手の力を借りながら、駒澤大学との差を詰めておけば、あとは丹所選手に離されたとしても全く構いません。

最悪、丹所選手につけなくてもいいから、駒澤大学との差は少しでもなくしておきたい。

それができれば、後半区間にいくほど、復路にも実力者を残している青山学院大学にとって有利になります。

それがわかっていたから、太田選手は丹所選手についていくだけで、前に出ることはありませんでした。

追い風をしっかり背中に受けながら、「丹所選手に付けるところまでしっかり粘ろう」と考えていたはずです。

狙い通りに丹所選手の力を借りながら、駒澤大学に追いつくことができました。この時点で青山学院大学の優勝する確率はかなり上がりました。

先頭集団が駒澤大学、東京国際大学、青山学院大学の3人になりましたが、そこから駒澤大学が遅れてしまいます。

これでさらに青山学院大学の優勝する確率がググッと上がります。

さらに18km過ぎで、丹所選手の顔色をうかがった後、素早く抜け出してトップに立ってしまいました。

 

これで青山学院大学の優勝はほぼ決定的でした。

まさに、太田選手は『状況を的確に判断し、チームの勝利という目標を達成するために、自分がいま何をするべきかを考え実行することができる』クレバーな選手だといえます。

 

③チャンスの平等と成果の不平等

青山学院大学では、すべての選手に過去の成績に関係なく、チャンスは平等に与えられます。

しかしアスリートとしては、順位が情け容赦なくついてしまうものです。

選手として成績が上がらなければ、引退してマネージャー転向を示唆されます。また、実力が2軍だと判断されれば、第二寮に行かされてしまいます。

それでも、チームとして成果を出さないといけないので、そうした成果や待遇が不平等になることは仕方のないことです。

一般社会に出れば、もっと厳しい現実が待っているのですから。

かといって、選手として知名度や実績があるからといって特別扱いもされません。

そもそもトップクラスの選手ばかりなので、今までがいくら良くても、いつレギュラー落ちしてもおかしくありません。

そうした機会の平等とともに、現実の厳しさも共存しているのです。

 

スポンサーリンク

各大学の勝因と敗因

青山学院大学はあれだけの圧倒的な勝利でしたので、正直なところ勝因しかなかったと思います。

では他大学はどうだったのでしょうか?他大学の勝因と敗因を少し考えてみました。

 

成績がよかった大学と悪かった大学の差

成績がよかった大学と悪かった大学の差は、➀他大学の選手と戦える選手層が揃っているのか、➁選手たちが最高のパフォーマンスを発揮できたかどうか、の2点でしょう。

 

➀戦える選手層

箱根駅伝に出場する選手は、自分たちの大学内ではレギュラー選手として、一目置かれる存在であるはずです。

しかし、自分たちの大学の中だけで強い内弁慶の選手ではなく、他大学の選手とバチバチの勝負ができる選手をどれだけ揃えられるか?

そして、速さとともに、強さも兼ね備えていなければいけません。

 

➁最高のパフォーマンス

そして、➁選手たちが最高のパフォーマンスを出せるかどうか。

調子がよければ、こんなもんじゃないと誰もが言いたいのでしょうが、やはり本番で結果を出せなければ、あいつは弱い、あの大学は弱いということになってしまいます。

皆が真剣勝負、ガチンコ勝負するのが箱根駅伝。

それだけに、本当はすべての選手が故障なく、最高の状態で戦って欲しいですね。

 

2位:順天堂大学

順天堂大学にとって、2位に入れたのは勝利といってよいと思います。

勝因は、選手の育成に成功しているからだと思います。昨今の順天堂大学は必ずしも高校生のトップランナーが入学してくるわけではありません。

しかし、次々と強い選手が出てくるのは、選手の頑張り、監督コーチの手腕とともに、大学のサポートも大きいはずです。

 

しばらく低迷していた時期もありましたが、箱根駅伝の名門大学ですし、今後も盛り上げていってもらいたいと思います。

ただ、1区が大失敗だっただけに、2区のエース三浦龍司選手が本来の集団を利用しながら、最後に抜け出すという長所を発揮できなかったのが残念です。

 

あと、8区区間賞の津田将希選手が注目されて、名前の響きが似ている菅田将暉さんと似ていることから間違えられたのか、注目されたのは面白かったですね。

 

王者・青山学院大学の壁はとてつもなく高いですが、準優勝校のプライドをもって頑張っていただきたいですね。

 

3位:駒澤大学

駒澤大学にとって、3位は明らかに負けレースでした。

敗因としては、ケガ人とピークを合わせられない選手が多かったこと、選手層が青山学院大学には及ばなかったことなど、たくさんありそうです。

 

実力というか持ちタイムではトップだった駒澤大学ですが、全日本大学駅伝のような10km少しの区間が多い駅伝は、田澤選手で一気に勝負をもっていくことができました。

しかし、箱根駅伝のように20km以上×10区間となると、区間10位以下の凹む区間があると、巻き返すのは相当しんどくなってしまいます。

 

特に、青山学院大学のように、2チーム作ってもワンツーフィニッシュしてしまいかねないようなチームは穴がないので、勝つことは難しいでしょう。

ただ、駒澤大学は青学のようなブランド大学ではないので、同じ戦い方は難しいと思います。

田澤・鈴木・唐澤の3トップに、新入生の佐藤圭汰選手(洛南高)のような怪物級をしっかり抱えながら、残りの選手もそこに追いつけ追い越せで頑張って、穴を埋めていくしかないでしょう。

 

最後に、私の順位予想、区間予想の記事において、前回6区を走った花崎選手について退部したという誤った情報を載せてしまいました。

お詫びして訂正いたします。花崎選手および駒澤大学の皆さん、誠に申し訳ありませんでした。

 

4位:東洋大学

4位に入った東洋大学は、下馬評を考えれば勝利といえるかもしれません。

全日本大学駅伝でシード権を逃したチームとは思えないくらいで、特に復路は、東洋らしいしぶといレースを見せてくれたと思います。

勝因はピークの合わせ方がうまい、スピードに難があっても長い距離に強いなど、東洋は本当に指導力があるというか、上手だなと思います。

しかし、酒井監督は決して納得はしていないでしょう。そろそろ優勝争いをする東洋大学が見たいものです。

 

東洋大学は、往路は若干苦しいレースになりましたが、知らない間にスルスルっとあがってきちゃいますね。

選手全員が勝負に対して、本当に真摯に向き合っているのだと思います。

 

あとは、ゴールデンルーキーの石田洸介選手が走らなかったのは残念でした。

故障ではないようですが、来年はしっかりスタミナをつけて、どんな走りを見せてくれるのか楽しみです。

 

5位:東京国際大学

過去最高順位タイの5位に入った東京国際大学。半分勝って、半分負けたような感じだと思います。

大志田監督としても、来年の箱根駅伝で優勝を狙うためにも、本当は往路優勝は是が非でもしたかったのではないでしょうか?

 

1区の山谷選手はもう少しスタミナをつけてもらいたいですし、2区のヴィンセントの故障も痛かった。

2区でトップに立てなかったことで、3区の丹所選手の負担がものすごく大きくなってしまった。

丹所選手は「自分のところで、2位以下と大きな差を作らないといけない」と焦ってしまったのでしょう。

後半息切れしてきたところを、青学の太田選手に付け入れられてしまいました。

 

ただ、4区以降の選手も粘れるようになってきたのは大きい。次回は最低でも往路優勝、できれば一気に頂点を目指したい。

さらに選手層の厚みを増して、強豪校として歴史を作っていってもらいたいですね。

 

6位:中央大学

中央大学にとって6位は上出来というか、会心のレースだったのではないでしょうか。

10年ぶりのシード権獲得ということで、藤原監督もホッとされたでしょうし、OBも大喜びでしょう。

 

勝因は1区で波に乗れたこと、2区の落ち込みを最小限に抑えて、3区以降で盛り返せたことだと思います。

勝負する区間と耐える区間に分けて、選手の役割分担を明確にして、緻密に作戦を練っていたに違いありません。

それにしても、1区の吉居選手の飛び出しは素晴らしかったですし、もちろん区間新記録の樹立もすごかった。

 

4月には吉居選手の弟の吉居駿恭選手(仙台育英)が入学してきますし、これから中央大学は強くなっていくかもしれません。

箱根駅伝の最多優勝記録を持つ名門が、どれだけ青山学院大学に肉薄していけるのか、とても楽しみです。

 

7位:創価大学

前回準優勝の創価大学にとって、7位はシード権は取れたとはいえ、負けといっていいでしょう。

敗因はまず、1区を走れる選手がいなかった。

葛西選手は長い故障明けだったにも関わらず、なぜ第二集団を引っ張るような体力を消耗することをしてしまったのでしょう?

 

勝つために我慢して、最後のスパート合戦まで体力を残しておかないといけないのに、最悪のレース運びでした。

そういう意味で、前回1区の福田選手のような「走力と知力の両方を併せ持った選手」がいなかったと思います。

ただ、嶋津選手は文句なしに走力も高いし、心の強さもすごいなと思いました。

 

あと、主力の緒方選手と石井選手が出られない上に、1区3区5区9区とあれだけブレーキしては、上位に入ることは絶対にできません。

それでも7位に入ってしまうところは、さすが前回準優勝という感じでしたね。

 

8位:國學院大學

8位の國學院大學は半分勝って、半分負けたような感じだと思います。

國學院大學も選手層がやっぱり薄い。主力が離脱すると、ガクンと戦力が落ちてしまう。

1区を走るはずだった島﨑選手と、主将の木付選手が故障ではどうしようもなかった。

 

1年生の平林選手と山本選手が素晴らしかったですが、主力の4年生が抜けてしまう次回大会が正念場となるでしょう。

中西大翔選手、伊地知賢造選手以外がまったく出てこない新4年生、新3年生の奮起にも期待したいです。

 

あと、5区の山登りを任された殿地選手は低血糖症ということで、ちょっと残念でした。

ですが、これまで殿地選手は、前々回10区で大学最高の3位に入る見事な走りをみせるなど、大貢献してきました。

引退されるようですが、お疲れ様でしたと申し上げたいと思います。

 

9位:帝京大学

帝京大学は出雲駅伝、全日本大学駅伝とまったく勝負できていなかったことを考えれば、まずまずだといえるでしょう。

特に、前回失敗した1区2区を無難に乗り越えたことで、自信のある3区5区で追いかけ回して、往路2位はすごかった。

 

ただ、ケガ人が多かったことと、意外と選手層が薄かったなという気もします。

しかし、下馬評が悪かった中で、帝京の選手はしぶといところを存分に見せてくれたと思います。

あと、細谷選手の後継者となるような山登りに強い選手も出てきたもらいたいですし、そろそろ帝京大学の優勝争いを見たいですね。

 

10位:法政大学

10位に入り、3年ぶりにシード権を獲得した法政大学。

勝因は、エース鎌田選手に頼らないチーム作りが身を結んだのではないかと思います。

 

前回大会は鎌田選手1人だけという感じでしたが、エースの頑張りに他の部員も奮起したのでしょう。

全日本大学駅伝もシード権ギリギリまで頑張っていましたし、最後まで諦めなかったことが、奇跡的な逆転劇を産んだのだと思います。

最後に、10区の川上選手が通称「寺田交差点」で道を間違えそうになったときは、びっくりしました。

 

シード権を取ったことで、出雲駅伝も出られますし、予選会は行かなくてもいいし、調整もしやすくなるに違いありません。

ただし、法政大学は鎌田選手に替わるエースを作りたいところでしょう。

 

11位:東海大学

ゴール1km手前で法政大学に抜かれ、シード権を失ってしまった東海大学。

敗因は何だったのでしょうか?もちろん吉富選手の低血糖症もあったでしょうが、それ以外の選手も持ちタイムはいいのに、ガチンコ勝負に弱い選手が多い気がします。

 

そして、やはりエース石原翔太郎選手の離脱が痛かった。しかし、さすがにお尻に火が付くでしょう。

それに名将・両角監督がこんな状態のまま終わるとは、到底思えません。

また、5区を走った1年生・吉田響選手はまさかの区間2位の快走。ケガさえなければ、東海大学を救ってくれる存在になりそうです。

 

各選手が危機感をもって練習に取り組むことで、来年は東海大学の逆襲が見られると信じています。

いま一番苦しいところだと思いますが、頑張って欲しいですね。

 

12位:神奈川大学

12位の神奈川大学としては、目標のシード権は取れなかったものの、大健闘だっと思います。

主力の呑村選手が離脱したのは痛かったですし、他の主力も出られなかった選手もいた中で、着実に力を付けているなと感じました。

 

贅沢を言わせてもらえれば、かつての鈴木健吾選手のような絶対的エースが出てきてもらいたいです。

そうしたゲームチェンジャーが1人いれば、神奈川大学は格段に強くなれると思います。

次回大会こそはシード権を奪い取りたいですね。

 

13位:早稲田大学

13位の早稲田大学にとって今回の箱根駅伝は、完全に負けレースでした。

敗因は、1区が最悪だったこと。選手の絶対数が少ないところに、故障する選手もいて、まとまりに欠けるチームだったと思います。

 

1区の井川選手は、なぜあんな中途半端なレースをしてしまったのでしょう?走力から考えても、吉居選手について先頭で突っ走るべきだったと思います。

それが出来ないなら、第二集団で我慢して、最後のスパート合戦に備えるのか、どちらかにすべきだった。

 

それなのに第二集団を引っ張ったあげく、利用されて沈んでいくという、1区のランナーとして最悪なレース。

やるべきことがはっきりしないまま、自滅してしまった。

その後も流れを変えられる選手がおらず、ほとんどTVに映らなかったのは寂しすぎると思います。

しかも、中谷・太田という27分台ランナーが卒業するので、来年度の早稲田大学はかなり厳しいでしょう。

 

14位:明治大学

予選会をぶっちぎりのトップ通過ながら、14位となった明治大学も負けレースでした。

敗因はもう全部と言いたいけど、一言でいえば昨年の失敗がまったく活かされなかった。

 

いろいろと原因はあるのでしょうが、予選会レベルだと上から呑んでかかれるのに、本戦ではビビってしまい、まともに戦えていないと感じます。

持ちタイムもよいのに、勝負に弱いというか、意外と脆いなと思います。

次回は、新4年生となる富田&加藤選手でチームを盛り立てていくでしょうが、2区のエース力が弱いので、1区2区で脱落してしまうと永遠に同じ失敗を繰り返しそうです。

今年はほとんど出番がなかったルーキーが2年生となって、どれだけ成長してくれるのか、楽しみと不安が入り交じった感じで、明治を見ていきたいと思います。

 

15位:国士舘大学

15位の国士舘大学は力負けではあったものの、往路は大健闘だったと思います。

2区ライモイ・ヴィンセントが強力なだけに、1区がもうちょっと粘れていたらという感じがします。

来年は新しい留学生が出てくるでしょうが、その留学生の力量とともに、日本人選手も他大学に勝つことを意識して、頑張ってほしいなと思います。

 

まずは予選会をしっかり勝ち抜いてくること。

今回の予選会のようなギリギリのレースをしていたら、何かアクシデントが起これば即終了となってしまいます。

チームの底上げをしっかり行い、留学生も強い化け物級を引っ張ってきたいところですね。

 

16位:中央学院大学

16位の中央学院大学は、1区でエース栗原選手のまさかの大ブレーキがあったものの、かなり健闘したと思います。

あの状況だと、後ろの区間の選手は普通は腐ってしまうと思います。しかし、みんながベストを尽くしていたと思います。

 

絶望的な状況の中で、2区:吉田礼志選手、3区:武川流以名選手、4区:伊藤秀虎選手が頑張ったことで、コツコツ順位をあげていてのは良かったと思います。

無名選手を育成して、箱根常連校となってきた中央学院大学が、来年はミスなく走ってどれくらいやれるのか、とても楽しみです。

 

今大会は、栗原選手、武川選手など主力が故障つづきで、苦しいシーズンだったと思います。

ちょっと気負いすぎていたのかもしれませんが、次回大会は、是非ともシード権を取ってほしいなと思います。

 

17位:日本体育大学

17位の日本体育大学は一度も目立つことができなかった。残念ながら懸念していたとおりの結果になってしまったと思います。

敗因は、予選会レベルだと気持ちの上で余裕を持てるけど、本戦レベルだと敵わないと萎縮してしまっているように感じます。

 

もちろん地力の問題もあるでしょうけど、最初から最後までまったく見せ場がないのは、やはり名門の体育大学として寂しい結果だと思います。

もう一度、イチから立て直して、複数人のエース級がいる強い日体大が見てみたいです。

連続出場記録もありプレッシャーも多いと思いますが、本当の戦いは箱根駅伝・本戦で勝っていくこと。

もう一度、チーム全員で意識を共有して、順天堂大学くらい勝負強くなってもらいたいです。

 

結果につなげるためにも、他大学のやり方も真似ながら、一つ一つの要素を丁寧にレベルアップしていきたい。

外国人留学生ナシでも、しっかり戦って結果を出せることを証明していってほしい。

 

18位:山梨学院大学

18位の山梨学院大学は、2区でオニエゴが上位まで押し上げたが、その後は下げていく一方だった。

敗因は、予選会レベルと本戦レベルの違いに戸惑ったのか、日本人選手がことごとく区間下位に甘んじてしまった。

特に復路は最下位で、飯島監督ももうお手上げという感じだった。

 

もう過去の栄光は忘れて、必死で強くなるように育成、練習するしかない。

それと来年はボニフェス・ムルワ選手が出てくると思うが、やはり日本人選手に負ける外国人助っ人は値打ちがない。

ここは自分に高いハードルを課してもらいたい。

最初は激弱だったポール・オニエゴがあそこまでいけるのだから、みんなが走力爆上げで勢いのいい山梨学院大学が見てみたい。

 

19位:駿河台大学

初出場の19位・駿河台大学は、正直なところ大健闘だったと思います。

繰り上げスタートなく、タスキをつなぎきったことも大きい。そこには徳本監督の緻密な計算があったと思います。

 

復路の6区~9区の4人の選手が青学に10分の差をつけられてしまうと、往路の10分と合計して20分となってしまい、繰り上げスタートになってしまいます。

特に、6区の小泉選手が青学との差を詰められたことが良かった。残りの3選手で3分25秒差以内にすればいいと、伸び伸び走れたのではないか。

 

また、31歳の今井選手と教え子・永井選手のエピソードなど、話題性もありましたし、大学関係者や地元の方も喜ばれたのではないでしょうか。

 

これからも箱根駅伝に出続けていけば、おのずと注目度もあがって、さらに盛り上がっていくことでしょう。

徳本監督のような個性的でおもしろい監督がいる大学が、どんどん箱根駅伝を盛り上げていって欲しいですね。

 

20位:専修大学

最下位の専修大学は期待していただけに、残念な結果に終わりました。

敗因は明らかで、2区3区が連続で区間最下位になったことです。

そして悪い流れを挽回することは一度もなく、1区・木村選手と7区・国増選手だけ少し善戦できたかなという感じ。

 

根本的に実力不足だと思うが、まずは高瀬選手とキサイサ選手はエースとして、区間5位以内に入れるように、必死に努力していってほしい。

僕の周りの口の悪い人は『専修なんか何しに出てきたんや💢』という人もいます。

予選会で落ちた大学の分まで背負って、シード校にひと泡吹かせる心意気で戦ってほしい。

誰かがバーンと弾けないと、もう古豪復活など夢のまた夢ではないだろうか。

 

今後の展望(高校生スカウト)

今後は、特にスカウト面で強者と弱者がはっきり分かれてくることでしょう。僕は4タイプに分かれていくと思っています。

①学歴に箔が付くブランド大学
②駅伝部が魅力的な大学
③選手の奨学金や設備などに力を入れている大学
④留学生頼みの大学

 

①ブランド大学

やはり高校生のスカウトが有利なのは、ブランド大学です。

誰もが入りたいと思うようなブランド大学は、駅伝の成績があまり良くなくても、高校生の選手が入学したいという大きな理由付けになるからです。

有能な高校生選手といっても、誰もが大学でも成功できるわけではありません。

高校まではバリバリのトップ選手だったとしても、大学で思うような成果が出せずに終わってしまう選手もいます。

そうなると、少しでも良い学歴を得ておきたいと考えるのは、人情というものでしょう。

ですから、早稲田大学、慶應義塾大学、そしてMARCHと呼ばれる明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学はかなり有利といえるでしょう。

 

②駅伝部が魅力的な大学

大学自体にはブランド力はなくても、駅伝部としてブランドがあれば、高校生の選手にとっては魅力的に映ることでしょう。

たとえば、駒澤大学の大八木監督や東洋大学の酒井監督に教わって、世界を目指したいと考える陸上選手は多いはずです。

こういう監督やコーチが魅力的な大学には、素質のある高校生の選手は行きたいと思うはずです。

また、選手として今はそれほど実力はないけれども、箱根駅伝に常時出場している大学は魅力的に映るでしょう。

青学や駒澤でレギュラーになるのは、本当に大変な競走を勝ち抜かないといけません。実力があっても箱根駅伝に出られない選手がたくさんいるのです。

たとえば、神奈川大学などはシード権からは遠ざかっていますが、箱根駅伝の本戦にはかなりの確率で出場しています。

そうした大学に行きたいという選手は、一定数いるはずです。

 

③選手の奨学金や設備などに力を入れている大学

たとえば、東京国際大学や創価大学などは、選手が生活する寮を新しく建てたり、トレーニング室が充実していたり、酸素カプセルがあったり、全天候型グラウンドがあったりと、大学がかなり力を入れています。

また、選手の入学金、学費が免除されたり、奨学金が出たりと、そうした経済的負担について留学生並に援助が出たりする大学もあります。

そうした大学は、監督コーチにも実力のある人を連れてきますし、経済的な面で諦めかけていた選手が「やっぱり箱根を走りたい」という動機があれば、スカウトしてくることも可能だと思います。

この2大学はまさにそうした本気の努力が、成果を出してきている大学だといえるでしょう。

箱根駅伝でも好成績を出しているこの2大学は、はっきりいって大学名に魅力はありません。

しかし「僕は陸上で頑張りたい。箱根に出られるチャンスがあるのなら、大学の名前など気にしない」という選手が入学してくる理由になると思います。

 

④留学生頼みの大学

これは現在、箱根駅伝に出場できていない古豪と呼ばれる大学や、かつての常連校、新興大学が当てはまるでしょう。

上武大学も来年からケニア人留学生が入学してくるようですし、他大学がケニア人留学生がいる場合に、厳しい予選会を勝ち抜くことを考えれば、どうしても必要となってくることでしょう。

前回の大東文化大学のように、ケニア人留学生が足を引っ張ってしまう場合もありますが、今後も留学生を連れてくる大学は増えていくことでしょう。

しかし、その分だけ限られた予算は日本人選手には使えなくなるというジレンマは抱えていくでしょうが。

 

第99回箱根駅伝予選会2023の展望

次回、第99回箱根駅伝予選会2023では、今大会でシード権を失った東海大学、早稲田大学、明治大学が予選会に回ります。

この3チームも予選会で敗退する可能性は当然あるわけですが、こんなビッグネームが3チームも来てしまうということは、実質7つしか出場枠がないわけです。

さらに、神奈川大学、中央学院大学、日本体育大学なども確実に入ってくるでしょうから、そうなると出場枠は35チームで4つの出場枠を争うことになります。

そう考えると、予選会はまた「キツ過ぎる厳しい戦い」になるものと思われます。

この実質4つの枠を巡って、国士舘大学、山梨学院大学、駿河台大学、専修大学といった今回出場した大学がまた狙っていくことになります。

そこへ挑むのが、拓殖大学、筑波大学、大東文化大学、上武大学、城西大学などの有力校

さらに、立教大学、日本大学、東京農業大学、流通経済大学、慶應義塾大学、麗澤大学などが虎視眈々と狙っていくことになります。

見ているこちらは今から楽しみですが、選手の皆さんは本当に大変な戦いとなりますね。

 

最後に

【第98回箱根駅伝2022】青山学院大学の勝因と他大学の敗因分析、いかがだったでしょうか?

それぞれの意見がおありかと思いますが、思いつくまま僕の意見を書いてみました。

何はともあれ、選手の皆さん本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

今から来年が楽しみで仕方ありません。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

 

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事